前会長ご挨拶 -前会長-

特定非営利法人日本インターンシップ推進協会前会長
西澤 潤一 首都大学東京学長


西澤 潤一 首都大学東京学長

 日本の生き残る道は科学技術立国しかない。この考えは戦後数十年経った今も変わっていません。私は大学時代、仙台の大空襲と敗戦の混乱を体験しました。焼け野原で食べ物がない、着のみ着のままの引揚者も街に溢れるという状況の中で学問が何の役に立つのか考え続け、私はこの結論に辿り着き、そこからずっと先端技術の世界で闘ってきました。

 欧米の研究開発部門と凌ぎを削った高度経済成長期と違うのは、これからは日本人が広くアジア地域に目を向け、共存共栄していく時代となってきたことです。私の研究室でもインドや中国などのアジア人留学生が増え、日本人学生とともに学んでいます。また、アジア初の一千万人都市である東京都が経営する本学では、日本の大都市のいいところ、悪いところをよく研究し、これから一千万人都市が増えていく各国に伝える責務があると考えて、都市工学などに力を入れています。

 いま、世の中のいろいろなところで、「愛」が欠けているような気がしてなりません。私は人間の強さには、やさしさと正しさが伴っているべきだと思います。日本には宮沢賢治がいて、「世界全体が幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という、高度な愛の哲学を確立しました。これは私たち日本人の、世界に誇るべき文化です。

  私はみなさんに、「素心知困」という言葉を贈ります。「素心」とは私が作った言葉で、「心の澱(よど)みをみな洗い流して最後に残ったものを見ると、それが愛だった」というような意味合いで使っています。「知困」は「礼記」にある言葉で、「知らなかったために困り果てること」、転じて「そこから必死で勉強すること」という意味です。

  学ぶことは苦しいこと、でも、より多くの人を幸せにできる「愛」を形にしていく手段を持っていると気づけば、とても幸せなことです。特に学問を追求する人には、自分の研究や仕事が国民の暮しを支えているという誇りをもち、愛にもとづいた使命感をもってほしいのです。私は向学心を持つみなさんに期待しています。